背景
次世代のEVとして、斬新な車のコンセプトを打ち立てたいY社。EVならではのきびきびとした走りと、これまでにない快適な車内空間を演出したいと考えた商品企画部は、優れた音響を生み出すドアインナーパネルの開発をドア設計部に依頼した。
課題
盲点だった音響性能というテーマに直面し、メンバーは手探りで開発に取り組むが…
開発テーマを聞いて、これまで音響性能を考慮した設計経験がないドア設計部のエンジニアのA氏は、頭を抱えました。
「確かにドアインナーパネルは、スピーカーを直接取り付ける部品ですが、音響性能を左右するものだという認識はありませんでした。いわば盲点だったわけです。そこで何か手がかりがないかと、付き合いがあるスピーカーメーカーに相談してみました」(A氏)
そのメーカーからA氏は大きなヒントを得ることができました。それは音響を良くするには、制振性能が重要ということです。
制振性能であれば自分たちの知見で何とかなる、と思ったのもつかの間。従来の制振性能を高める方法は、いずれもドアを重くすることになるということにA氏は気が付きました。重量を増やすことは、EVとしての軽快な走りを損なうことになってしまい、それは許されないことでした。
「我々は、これまで使ってきたアルミ、鋼材、複合材などさまざまな素材や、インナーパネルの形状を検討し、試作とシミュレーションを重ねました。しかし、どれも理想の音響性能を実現することはできませんでした。このままでは…」(A氏)
- 課題のポイント
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- 音響性能を高めるためには、制振性能を高めることが必要だった
- ドアを重くすれば制振性能を高めることができるが、走行性を損なうことになった
- さまざまな素材やインナーパネル形状を検討したが、理想の音響性能を実現できなかった