背景
新しいスポーツタイプのBEVを開発中のJ社。環境性能ときびきびとした走りを実現する上で必要な軽量化を図る手法に、ドア設計室のメンバーは悩んでいた。
課題
各国で厳格化する衝突要件…ドアの軽量化を図り強度を保つ最適解が見つからず...
開発を進めていく中で直面したドアの軽量化に対する課題について、ドア設計室のU氏は、以下のように振り返ります。
「スポーツタイプの車のドア、特にツードアクーペはサイズが大きいため、特に軽量化が求められていました。しかし、衝突要件は各国とも厳格化しており、中でも、すぐさま乗員の命に関わる側面衝突はより高い安全性能が必要とされ、安易に軽量化できませんでした。一方で、社内からは部品点数を減らしてトータルコストを削減することも求められていたのです」
従来の金属製ドアは軽量化の限界に達していることもあり、社内からはコンポジットを使用してはどうかという意見が出されました。
ドアを全てコンポジットで作れば、軽量化はもちろん、部品統合による部品点数の削減もできます。そのため、トータルコストを低減できる可能性はありました。しかし、コンポジットだけのドアでは、衝突安全試験に耐えられるかについては不安が残りました。
そこでU氏は安全性を考慮し、コンポジットと金属製ビームを組み合わせたマルチマテリアルドアを検討することにしました。それでも、異種材料の組み合わせとなるために、リサイクルの手間が増えることや品質にばらつきが出るという懸念は、払しょくできぬままでした。
軽量化と安全性、トータルコストの全てをバランスよく満たす解が見つからず、U氏は頭を悩ます日々を送っていました。
- 課題のポイント
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- スポーツタイプのBEVの開発に当たって、大型ドアの軽量化が求められた
- オールコンポジット製ドアでは、安全性に不安があった
- コンポジットと金属部品を組み合わせたマルチマテリアルドアにも、リサイクルや品質の面での懸念があった