背景
BEVの次期グローバル戦略モデルを開発中の自動車メーカーR社。航続距離伸張のため、軽量化を図りたいボディー設計部では、アッパーボディーの各部品の見直しを行っていた。従来の金属部品の樹脂化を検討していたものの、BEVならではの耐火絶縁性能や材料のリサイクル性などに対する懸念事項は多く、検討は難航していた。
課題
性能・利点はそのままに、部品の軽量化と耐衝撃性を高めたい…
ボディー設計部が見直しの対象としていたのは、バッテリーボックスの構成部品であるバッテリーカバーとバッテリートレイ、車体下部の衝撃からバッテリーボックスを全方位的に保護するボトムプロテクターなどの大型部品でした。
現行のバッテリーボックスは鉄製、ボトムプロテクターはアルミニウム製で、それぞれかなりの重量があり、これらを樹脂製に変更することで大幅な軽量化が期待できました。しかし、ボディー設計部主任技師のS氏は、続けて部材選定の難しさをこう説明しました。
「現行品は衝撃を受けると凹みが生じ、衝撃を繰り返すと穴が開く恐れがあり、耐衝撃性を高める必要もありました。一方で、樹脂製に変更することで難燃性や成形性、リサイクル性能などが現行品より低下することは避けたかった。新部材は、これらの要求を全てクリアするものでなければなりませんでした」(S氏)
S氏は、炭素繊維強化樹脂などあらゆる樹脂材を取り寄せ、バッテリーボックスとボトムプロテクターに要求される性能を満たす材料を探しました。
しかし、全ての要求を満たす樹脂材料は、なかなか見つからなかったのです。
- 課題のポイント
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- 鉄やアルミなど金属製の車体部品を樹脂製に変更し、大幅な軽量化を実現したかった
- 部材の変更により、耐衝撃性を高める必要があった
- 難燃性・成形性・リサイクル性などの性能低下は避けたかった