次期モデルでは、トラックベッドの顧客の不満を一掃したい！

売れ行き好調であるピックアップトラックの次期モデルの設計に着手したZ社。しかし、環境意識の高まりにより、これまでにない軽量化タスクが課されていた。また、現行モデルについては、車体デザインは好評であったが、スチールを使用したトラックベッドは貨物積載時に生じる亀裂、それに伴う錆びの発生など、顧客の不満の声が届いていた。

軽量化のアプローチだけでは課題の解決が見えず、コストも膨れ上がり問題に…

車体設計部では、軽量化を実現するために検討を重ねていました。実現する材料としては、アルミを選択する方策があります。しかし、依然として凹みや亀裂に関してはスチール製と同様の課題があり、行き詰まっていました。このときの状況を車体設計部のU氏は次のように振り返ります。

「トラックベッドのような複雑形状は成形が難しく、分割する必要があります。部品点数が増えることでプレス工程が多くなり、おのずと金型面数も増え、金型費の投資回収が難しくなるのが目に見えてきました。そこで、金属に代わる材料を探したところ、樹脂が候補にあがりました」

U氏は早速、他社の動向や車種ごとのオプションを研究し、トレンド情報の収集を急ぎました。その結果、樹脂材料をトラックベッドの素材として採用するケースが増えていることが分かり、候補選定が間違っていなかったことを確信します。しかし樹脂材料は、軽量化は期待できますが、機械的物性で金属に劣るイメージが払拭できません。加えて、自社には樹脂材料の設計や量産のノウハウがないため、導入にはハードルが高いと予想されました。そこで、いくつかのサプライヤーに声をかけ、これらの課題をぶつけてみました。すると多くのメーカーは、ガラス繊維に熱硬化樹脂を含浸させたGF-SMC※を材料として提案してきました。それも、材料提供のみで、トラックベッドの成形ノウハウは持ち合わせていなかったのです。
ところがサプライヤーの1社、Teijin Automotive Technologiesの提案だけは他社と少し違っていました。

※GF-SMC：Glass Fiber-Sheet Molding Compoundの略。熱硬化性樹脂をガラス繊維に含浸させ、シート状にした成形材料。